雲が多い青空。

近所の子供たちが元気にロボトルをしている。

その横でロボロボ団を追い回すセレクト隊。署内で俺とお茶を飲む分隊長。

どうにもシまらない。

「つまり、盗まれたティンペットを自力でロボロボ団から奪い返したと、そういうコトですか」

「そーさ。なっ!」

「そーだよ!ねっ!」

昨晩、俺たちはついにティンペットを取り返した。

ぐっすり寝て起きた後にセレクト署に顔を出したというイキサツだ。

「ならウチに来る必要は無かったのでは?解決済みの問題に我々は関与しません」

「ヒマなんすよ」

「メンテしてもらおうと思って」

揃って頭を垂れる。言われればその通りなんだが。つい習慣で来てしまった。

「もう飲みましたか?」

「あっ、どうも」

頭が銀ピカなハチ型メダロットがお茶受けを持っていった。いつもの事だ。

「前から気になってたけど、アレ誰のメダロット?」

「本官です。それより、用が済んだならお帰り下さい」

追い出されてしまった。

行くアテもないし、コンビニでも行くか。

「古いほうのティンペットに装着するパーツでも買うか」

「やった!」

ウルが一足先に走っていった。


「いらっしゃーい。あらジク君」

「どもっす」

先輩だ。今日もヒマそうに見える。

「お買い物?」

「はい。DOG型ないっすかね」

「ちょっと待ってね」

奥でガサゴソしている。在庫を確認しているんだろう。

すぐにパーツ一式が入った箱を持って戻ってきた。

「ゴメンネー。今は品切れ中みたい」

「なんだぁ」

ウルがガッカリきてる。

「かわりにコレ売れ残ってたよ。COM型。どう?」

COM型メダロット。コーマドッグだ。

ホコリが被っている。長い間ずっと売れ残っていたんだろう。

「それ下さい」

「ジク!?」

俺は犬が好きだ。

犬は犬でも、犬型メダロットが好きなんだ。

「まいどありー。袋に入れるから待ってて」

考え込むウルとせかせか動く先輩。

平和だなぁと思いながら奥のほうに目をやると目につくモノがあった。

遺失物入れがイッパイになっている。

「それ、もうイッパイすね」

「遺失物?みんな忘れっぽいのよね」

先輩からパーツが入った袋を受け取り、なんとなしに中を見せてもらう。

チャリン

こぼれ落ちたのはメダルだ。

「これ、見たコトないメダルっすね」

「あーそれね、セレクトメダルっていうらしいよ」

「セレクトメダル?」

「セレクト署で売ってる初心者用のメダル。射撃にも格闘にも向いてるんだって」

「へぇー。誰が落としたんすかね」

まじまじと見てみる。便利なメダルがあるんだな。

「ジク君が休み取って海行ったでしょ?その日の前に大声で話してたヒトたちが落としてったみたい。

私、裏で休んでたから気づいた時にはいなくなってたけど」

ガタンッ

俺は走り出した。セレクト署に向かって。

「ど、どうしたのジク君?」

「わかんない・・・」

呆然とするふたり。急に走り去ったジクを、ウルは慌てて追いかけた。


「特に変わった箇所はないですね」

「もっとよく見てみてくれ!」

「そう言われてもね。また何かわかったら連絡しますよ」

何が、変わったトコロはないだ。目でちょっと見ただけじゃねーか。

体よく追い出されたってコトか。

「ジクー」

ウルがこっちに向かってきた。

「おう」

「どうしたの。急に走り出して」

フシギそうに俺を見るウル。

俺は歩きながら、考えてるコトを話し始めた。

「いいか、コレは俺たちを浜辺にしむけた連中が持ってたメダルだ」

「うん」

頷くウル。

「連中はロボロボ団のアジトを知ってたってワケだ。ロボロボ団のアジトなんて、ロボロボ団しか知らないだろ?

だから、このメダルはロボロボ団のモノに間違いない」

「おぉー」

ホントにわかってんのか?

俺は話し続ける。

「これはセレクトメダルだ。セレクト隊のメダル。こんなモノ、ロボロボ団が買えるワケない。つまり・・」

「つまり?」

「セレクト隊の中にロボロボ団の仲間がいて、コッソリ仲間に渡してるってコトだ」

「えぇ!?」

やっとビックリした。遅すぎる。

ウルは慌てて聞き返してくる。

「で、でもそんなハズないよ。それに、言ったって誰も信じてくれないよ」

「そうだな」

そうだ。正義の味方の中にワルいヤツらがいると知らせても、あの隊長に追い出されるだけだ。

その時、郵便屋さんの赤いバイクが俺たちの横を通り過ぎた。

「うーん・・・郵便か!」

「ジク、また『ヘン』なコト考えてない?」

ニヤける顔を見られたらしい。顔に出るタイプなんだ。俺は。

「いいか、よく聞け」

「うん」

「俺たちがこのコトを言っても、オトナは誰も信じちゃくれないだろう。

でも、コドモならどうだ?」

「公園に行ってひとりひとり話すの?」

俺は首を振る。

「違う。それじゃ、オレが捕まっちまう。

今じゃ、みんなロボロボ団を怖がって外を出歩くのを怖がってるからな。

そうじゃなくて、手紙ならどうだ?」

「手紙は読むよ」

「そうだ!手紙なら、俺の言うコトを見てくれるハズだ!」

「ジク、あたまいー!でも、どうやって?」

「郵便屋さんになって配りゃいいんだ!」

ハッキリ言ってバカみたいな作戦だ。

でも、面白そうだ。ワクワクする。

「バイク買いに行くぞ、ウル!」

「えぇ!おカネは!?」

「ロボトルしまくってパーツ売るぞ!」

「わかった!」

「いくぜ!」

「オウ!」

俺たちは走り出した。

笑い声を上げながら。

 

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