セビトがズラリと並ぶ筐体の前で立ち止まる。
ゲームに没頭する客の中で、丁度3台だけ空いていた。

「ここでいいだろ。座るぞ」

セビトが左の台にドカッと座る。
『シノビ戦駆』と書かれたゲームだ。

「ウチはこれにしよー」

フウミは右の台に座った。
ゲーム名は『マリンボア』で、台の上に灰皿が乗ってる。

「選択肢ないじゃん。オレ」

残る中央の席に座った。
目の前にある『コンバットロード2』は格闘ゲームっぽい。
アサルトティラノを選択。最初の相手はジ・エンシェント。
『STAGE1 FIGHT!』
文字表示が消えてからすぐに攻撃する。
上にある耐久力がどんどん減っていった。
最初の相手は予想通り弱い。

「ね、タダシってどこのガッコ通ってんの?」

フウミが話しかけてくる。
横目で見ると、海の中をメダロットが進んでる最中。
横スクロールシューティングゲームに見える。

「1丁目の中学校。柄は悪くも良くもないよ」

「ふーん。楽しい?」

ジ・エンシェントを倒したら次はフラッペ。
オレは機械的に技コマンドを入力する。

「つまんないよ。小学校よりみんな仲が悪くなったみたいで」

ア・ブラーゲの連続攻撃をガード。
何も考えなくても、指が勝手に動いて相手に攻撃していく。
このゲームは初めてなのに。

「ケンカはしなくなったけど、知らない奴と仲良くなれなくなった。
同じ小学校出身の奴とか、女同士、男同士で固まってんだ。
同じ部活の奴らも。気持ち悪くて馴染めない」

次はサムライ。防御力が高くて与えられるダメージが少ない。
フウミはゲームオーバーになったのか、こっちを見てオレの話を聞いてる。

「親は、学校のことに口を出してくるようになった。
家でゲームすると怒られるからゲーセンでやってるんだ」

クライバンシーの特殊攻撃に苦戦する。
隣を覗くと、フウミが暗い顔になっていた。

「うん、うん。わたしんちもそうなんだ。
ホント、ヤになっちゃうよね・・・」

「何でフウミが落ち込んでんだよ」

声が震えて、泣きそうになってるのが嫌でもわかった。
ゲームの合間に持ってたポケットティッシュを台の上に置く。
フウミがすぐに受け取って鼻をかみだした。

「うっうっ。準備いいねタダシ・・・」

「ティッシュくらい持っとけよな」

ダークパンサーを倒すとボスが現れた。
巨大なバンカランがフライトラップを呼び寄せてくる。

「人間ってのはすぐに変わっちまう。
変わるか変わらないか、決めたらどうだ」

セビトが言った。
フライトラップを倒しながらバンカランに技をかける。
反撃をうまくかわしながら攻撃を叩き込むとエンディングが流れた。
セビトの画面を見ると、忍者メダロットがやられていた。

「オレの勝ちか、コレ。今、誰が何勝してるんだっけ?」

ゲームに夢中で肝心の勝敗を忘れてた。
セビトが首を振る。フウミは指折り数えてケータイに何か打ち込んだ。

「数えたらこんなもーん」

画面には『セビト1タダシ2フウミ2』と入力されている。
次にオレかフウミが勝てば1位決定ってわけだ。

「次で最後?」

「そうっぽい」

「なら、上に行くぞ。まだ行ってないだろ」

オレたちは最後のゲームを求め、階段を上った。

 

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