1Fの奥にはゲーム台が置いてある。
ところが今日はまるごと撤去されていた。
それどころか、見覚えのないモノが設置されている。

「流しそうめんを始めたのか、この店は」

「パパ・・・じゃなかった、セビト。上見て上」
『メダルロッド』
デカデカと掲げられた看板にそう書いてある。
フウミが頭の上に?マークを浮かべて棒立ちだ。

「メダロット?」

「メダルロッド」

「メダルォッドゥ」

発音がどうもおかしい。
セビトはオレたちを無視して店員と話してる。
短い釣り竿を借りてこっそりゲームを始めていた。

「セビト、フウミがおかしい」

「知っとるわい。お前らも早く借りろ」

「アンタら、見てなさいよ・・・」

フウミも釣り竿を持ってセビトの横に並んだ。
出遅れたオレは店員にゲームの説明をしてもらうことにした。

「これ、どんなゲーム?」

「メダルロッドは、こちらの釣り竿を用いての釣りゲームです。
景品が上から流れてきますので、釣り竿を使ってうまく釣り上げて下さい。
釣り糸が切れるまで何度でも釣り上げることができます」

店員のにーちゃんから釣り竿を受け取ってふたりの隣に並ぶ。
金魚すくいに似てるかもしれない。

「メダルが流れてきたぞ」

「それアメじゃない?」

セビトが早くも六角形のアメを釣り上げてフウミがヒマそうにそれを見てる。
六角形といえば釣り竿のリールもそうだ。
糸が短いから、高さが2、3センチ変わるくらいだけど。

「フウミはやらないの?先にもらってただろ?」

「ウチのはもう切れちゃった」

切れた釣り竿の先を見せられる。セビトのはまだフックがついたまま。
ってことはオレとセビトの勝負になるか。

「おっ。きたきた」

螺旋状になってるチューブのてっぺんからイカダが降りてくる。
上にビニール袋に入った景品を乗せて。
目の前に流れてくる景品をタイミングを合わせて釣り上げる。

「オレもアメかよー」

袋を開けるとセビトと色違いのアメが入ってた。
もっと手ごたえがある獲物を釣りたい。

「セビト」

「わかってらぁ」

「え、え?何何?」

体をほぐして息を整えるオレとセビト。
状況を呑み込めてないフウミをよそに、オレたちは集中する。
釣り竿を垂らして待つ。さっきのでコツはわかった。
景品が流れてきたら水の流れに逆らわないように。
ヨットが流れてきた。オレはすかさず糸の高さを調整する。

「あ・・・」

上流で糸を垂らしているセビトに取られてしまった。
なんの、まだこれからだ!


「ふたりとも熱くなりすぎ!店員さん冷たい目で見てたよ・・・」

ようやく糸と息が切れたオレとセビト。
途中からフウミのバッグに景品を詰め込んで。
溢れた分は店員からビニールの袋をもらってそこに入れた。
集まってきたギャラリーにお菓子を配ったから、出入り禁止にはならない。
そう信じたい。

「数は?」

「どっちとも数えてたよな?」

フウミが数えてくれてたのを思い出して同時に訊く。
顔を交互に見てからため息をついて、フウミは教えてくれた。

「セビトが20コ。タダシが19コ」

「くそぉ、負けた!」

「へっ。まだまだだな」

悔しい。
床をドンドン叩くオレの手をセビトが止めた。

「勝負は続いてるんだぜ」

「そうだ・・・。まだ終わってない、男の勝負!」

オレとセビトは2Fへ続く階段を上る。

「なーにやってんだか・・・」

フウミが置き去りにされた景品を持って後に続いた。

 

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