「まあ待て。始める前に少し話をしようか」

「話すことなんてねーよ!」

「ないよ!」

「そう言うな。すぐに終わったらつまらんだろう」

ムカデはポン、とバケモノメダロットの頭の上に手を置く。

「コイツの型番は『WEA』兵器型のメダロットってワケだな」

「兵器型・・・?」

「そう、我々が・・・私が極秘裏に開発を進めた新型メダロットだ」

「何を言ってんだ?メダロットはおもちゃだ。トモダチロボットだ!」

「トモダチ、ね。ククク」

「どこがおかしい!?」

メダロットが『兵器』になるハズがない。メダロットは『おもちゃ』なんだ。

どこの世界におもちゃの武器で戦う兵隊サンがいる?

「メダロットは武器だ。確かに性能は兵器に比べて格段に劣る。

だがバカとハサミは使いようだ。使い方によっては十分に人をキズつける道具になる。

キサマが持っているそこのチャチなメダロットも同じだ」

「オ、オレ?」

指さされてウルが動揺する。

「そうだ。市販品を改造したことによって本来以上のスペックでメダロットが動く。

だからキサマらは強いのだ。そして、もうひとつ」

ニヤニヤしているムカデを目で追う。

「我々ロボロボ団は近いうちに本格的な行動を起こす。

そうすればキサマらも私が言っていることが理解できるだろうさ」

「言いたいことはそれだけか」

俺は口を開いた。

「早く始めな、バカヤロウ。お前が言う『チャチなメダロット』とそのメダロッターのチカラ。

すぐに思い知らせてやるぜ!」

「そーだそーだ!」

「ククク。いいだろう・・・」

メダルをセットするムカデ。動き出すバケモノ。

違う。コイツは『メダロット』だ。マスターに裏切られたかわいそうなメダロット。

コイツをこんなにしたヤツは、目の前でニヤニヤしている。

許せない。

俺の胸の奥で何かがメラメラと燃えてきた。

「コードビースト、チューブマシンガン使用」

「隠れろウル!」

「うわあああっ!」

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガ

「ジクー!どうすんのコレ!」

「出るな!そこに隠れてろ!」

「ハハハハハ」

威勢よく隠れるなんて初めてのケイケンだ。

考えろ。あのオカシイ連射にさらされたらすぐにボロボロにされてしまう。

どうすればいい。岩陰もそう長くは保ちそうにない。

「どうした、威勢がいいのは口だけか?」

「うるせぇ!」

「ジクー!」

ちくしょう。弾切れないのかアイツ。どうしたら・・・。

ガキン

『左腕に異常発生』

「強制排莢」

急に攻撃が止んだ。だが。

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ

「くそっ。またかよ!」

「ホラホラ、どうした?」

再開する射撃。もう隠れるのは無理だ。

アブないがやるしかない。

「ジク、やぶれかぶれだ!撃ちまくれ!」

「リョーカイ!」

ドウンッドウンッドウンッ

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ

『脚部パーツ、ダメージ18%左腕パーツ、ダメージ11%。なおも上昇中』

「イダダダダダ」

「耐えろ!撃ち返せ!」

「真っ正面から撃ち合うなんて、アタマ悪いなキサマら」

「ヨケーなお世話だ!」

『頭部、ダメージ21%。右腕、ダメージ30%。なおも上昇中』

ガキン

「今だ!」

ドウンッドウンッ

『左腕パーツ、ダメージ32%。発射口に異常発生』

「クッ、何をした!?」

止まる射撃。うろたえるムカデ。

反撃開始だ。

「それは!」

ドウンッドウンッ

『右腕パーツ、ダメージ29%』

「マガジンに!」

ドドドッドドドドッ

『頭部、ダメージ11%。左腕、ダメージ62%』

「弾がハサまったんだろ!」

「全砲門準備完了!いくよ!」

ドドドドドッドウンッドウンッ

『脚部、ダメージ24%。左腕、ダメージ99%。機能停止』

「バ、バカな。器用にもホドがあるだろう」

「弱点が丸見えなんだよ。そのメダロット」

「作ったヒトに会ってみたいよね」

ケムリが立ち上る。黙るムカデだが、すぐに口を開いた。

「マグナムミサイル使用。体制制御後にファングブラスト使用」

ドゴォッ

『左腕パーツ、ダメージ99%。機能停止。脚部、ダメージ72%』

「いっ!?」

「ウル、まだ来るぞ!逃げろ!」

俺の叫び声をかき消すようにアイツがどデカい重力弾を発射する。

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン

『右腕パーツ、ダメージ69%』

「ハハハハハハ。どうだ、これが私の兵器だ」

「ウル!?」

「かすっただけだよ!」

膝立ちのウル。なんとか直撃はしなかった。

でも、威力が高すぎる。命中率も高い。

このままじゃ・・・。

「大人しくしていればメダルまでは壊されないかもしれんぞ。どうする?」

「そんな・・・」

メダルはメダロットそのものだ。メダルは壊れたら、元には戻らない。

『命』そのものなんだ。それを、簡単にコワそうとするなんて。

「ダメだ・・・」

「ジク?」

「俺は『ヘン』が好きだ」

「ホウ」

手が震える。

「そのメダロットは『ヘン』だ。だけど気に入らない。どうしてか教えてやる」

「なぜだね?」

「ソイツのメダロッターがテメーだからだよ!!!」

ドドドドドッ

ドゴォォォッ

『右腕パーツ、ダメージ99%。機能停止』

『左腕パーツ、ダメージ99%。機能停止。脚部パーツ、ダメージ90%。活動限界です』

「どんなコトを言うかと思えば。ただのシットじゃないか、それは」

「うるせぇ!黙ってろ!」

両腕がやられた。足も、もう動かない。

「ジク、どうしよう・・・」

「すまねぇ、ウル」

「終わりだ」

アイツの頭部パーツにエネルギーが集まる。

まだ、終わってない。

「ムチャさせる。ゴメンな」

「いいよ。あとで怒るから」

ウルの頭部にペントされた弾丸マークがスライドする。

「ムダだ。この距離じゃ当たらんよ」

「あぁ、そうだな」

「何を・・・」

ギギギギギ

『パーツが活動限界です。メダロッターはメダロットを強制停止して下さい』

メダロッチから流れる警告メッセージも、今の俺には聞こえない。

それはウルも同じだった。

「いけ!ウル!」

「ムダだと言ってるだろう!犬っころ風情があがいたところで、オオカミには敵わん!」

ムカデが叫ぶ。違うな。怒っている。

その姿につい笑ってしまう。

「くだらねぇルールだ」

「とおっ!」

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン

『脚部破損。使用不能』


ウルが跳んだ。

脚部パーツはメチャクチャだ。ティンペットも無事かどうかわかったもんじゃない。

だが、アイツの攻撃は直撃していない。

『頭部パーツ、ダメージ77%』

「いけえええええええええええええええええええ!!!!!」

ドゴムッ!

ドスン

撃った反動でウルが倒れた。

アイツは・・・。

『頭部パーツ、ダメージ99%。機能停止』

チャリン

メダルが背中から飛び出した。

「驚いたな・・・」

ムカデはそれをマジマジと見ている。信じられないってカオで。

ざまあみろだ。俺たちは勝ったんだ。

「平気か、ウル」

「うん。なんともないよ」

ウルを助け起こす。もうやることはやった。

アイツのパーツをバラバラに取り外す。すぐにティンペットが姿を現した。

「やったぜ!」

「やったね!」

夢にまで見たティンペットを取り返した。

もう、ここに用はない。トーゼン、ムカデにもだ。

そのムカデは笑っていた。

今までよりブキミなニヤニヤ顔で。

「礼を言う。これで準備が整った」

「あん?イミが・・・」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

「ジク、天井がくずれてる!」

「うわっ!冗談じゃねぇぞ!逃げろ!」

ドゴーンドゴーン

次々に落ちてくる岩。入り口まで走る俺。

背中にウルを乗せたまま全力疾走した。


「あのヒト、埋もれちゃったのかな?」

「さーな」

すっかり白くなり始めた道を、ウルをおぶって歩く。

今日はイロイロありすぎた。どっと疲れが押し寄せてくる。

「ねぇジク。アッチ見てよ」

「アレって・・・」

日の出だ。

マブしい。とっても。

小脇に抱えたティンペットがだらしなくブラ下がり。

俺をいっそう疲れさせた。

帰ろう。我が家へ。

 

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