山々の間から光が差し始める。
朝日に照らされるハッカ町は水浸しだった。
川の近くに建てられた研究所も例外ではない。
ギギギギギギギギュイーン
研究所に流れ込む水流と壊れた自転車、木の枝といった雑多な物。
ランキはそれらを手に持つ大きなドリルで削り飛ばす。
流れる大量の水は地下深くまで流れていく。
既に貴重品と諸々を移動させた各員は流れが収まるのを待った。
「終わった!」
ランキの呼び声で恐る恐る階段に集まるわたしたち。
太陽の光が徹夜明けの目に染みた。
あれから地下の浸水対策と精密機器の避難で長時間かかってしまった。
全員で弱々しく喜ぶ。ランキだけが変わらず元気だった。
「元はといえば、こいつが!」
拳を振り上げる警備員の方を研究員のひとりがそっと止める。
「まがりなりにも脱出を手伝ってくれたんですよ、彼は」
怒る元気がなくなったのか、彼は握った手を降ろした。
別の研究員が話す。
「どうしますか、侵入者のことは。セレクト隊に連れていきますか?」
「研究所の片付けもありますし、彼なら振り切ってしまうかもしれません。
人手が足りないですからとりあえず手伝ってもらいましょう」
わたしは提案した。疲れ切ったこの状態で連れていくことは困難に思える。
ランキは諸手を上げて叫んだ。
「厄介になる!」
「うるさい!」
思わず、その場にいる全員が叫んでしまった。