眼前に立ち塞がるKBT型メダロット、ベイアニット。
室内ロボトルではこちらのゾーリンが有利。

「ゾーリン。探知機能を」

「はいマスター」

ピッピッピッピッ

頭パーツのレーダーを起動させる。
これで素早い動きにも対応できるようになった。

ドドン

撃ってきた弾を身をかがめてかわすゾーリン。
右手のソードを開いて跳び、反撃する。

ガリッ

『脚部パーツ、ダージ19%』
ベイアニットの左足を引き裂く。
攻撃を受けたベイアニットはどこ吹く風か、じっとランキを見つめていた。

「おい、つえぇぞ。どうする?」

「粉骨砕身!」

「使い方違うんじゃねーのか。それ」

ドン

『右腕パーツ、ダメージ3%』

「跳弾!?」

回避行動を取ったゾーリンの肩の端を弾丸が通る。
微かに体制が崩れた彼に向かって間を置かず発砲音が轟いた。

ドドドン

『右腕パーツ、ダメージ40%。左腕パーツ、ダメージ13%』

「ゾーリン、そのまま反撃!」

「はい!」

ガリリリリ

『左腕パーツ、ダメージ40%』
ソードで反撃する。ベイアニットの左腕装甲が深く傷ついた。
走って一旦離れようとするゾーリン。
ベイアニットが大きく回転し、左腕を叩き付けた。
『左腕パーツ、ダメージ42%』
『左腕パーツ、ダメージ25%』

「ぐうっ!」

ゾーリンが壁に吹き飛ばされる。
むちゃくちゃな戦い方。しかも指示を出しているようには見えない。
まるでメダロットが暴走しているよう。

「あなた、メダロッターなのに指示を出さないの?」

ランキに問いかける。彼は、なぜ腕組みをしているだけなのか。
呼ばれたことにようやく気づいたのか、ランキは顔をこちらに向ける。

「お?やってる!」

「こいつの言うことはあんま気にしないほうがいいぜ」

ドンドン

そう言って走りながら撃つベイアニット。
狙いがブレているせいで攻撃の軌道が読めない。
『右腕パーツ、ダメージ60%』

「ゾーリン、連続で攻撃を!」

ガツン

『左腕パーツ、ダメージ91%。右発射損傷』

「せい!」

『左腕パーツ、ダメージ99%。機能停止』
ハンマーとソードのコンビネーション攻撃が命中。
ベイアニットの左腕が機能停止した。
ゾーリンの眼前に向けられる銃口。

ドドン

『頭部パーツ、ダメージ40%。レーダー損傷、使用不可能』
廊下に倒れるゾーリンに大重量の右足が振り下ろされる。

ガシャッ

『右腕パーツ、ダメージ45%』
踏みつけたのは右腕。向けた頭部からミサイルが発射された。

ボカン

『頭部パーツ、ダメージ30%』
『右腕パーツ、ダメージ99%。機能停止』
至近距離で爆発が起き、ふたりのメダロットが正反対に吹き飛んだ。

「ゴホ、ゴホ!」

わたしは息苦しさにむせ返る。
煙が晴れるとランキが大声を出した。

「ゴー!」

「うるせえ!」

ドドン

『左腕パーツ、ダメージ44%』
悪態をつきながら射撃するベイアニット。
ゾーリンが弾丸を防ぎながら走る。
わたしはむせながら指示を出す。

「ゾ、ゾーリン。ハンマー攻撃!」

ビュッ

左腕のハンマーが空を切る。
かがんでいたベイアニットは立ち上がって腕を弾いた。
再び至近距離で向けられる銃口。

ドドン

『頭部パーツ、ダメージ82%。モニター損傷』
よろめくゾーリン。追撃しようとするベイアニットは動きを止めた。

「ち、弾切れか」

危うく立ってはいるけれど、ゾーリンは明らかに限界が近い。
対してベイアニットも攻撃手段がひとつに限られている。
指示が思いつかない。出せるのは、攻撃のタイミングだけ。

「交通障害破壊弾仕様硬式・・・」

「コング2だ!」

呼びかけるランキと発射の構えを取るベイアニット。
この距離じゃ間に合わない。
ゾーリンがやられる。負けてしまう。

「ま・・・負けないで!ゾーリン!」

「言われるまでもないです!」

勢いよくハンマーを振りかぶり走るゾーリン。
ミサイルが発射された。距離は、もう片腕分もない。
ドゴォォォォン
チャリン
2枚のメダルが廊下に落ちた。


「引き分け・・・」

「ナイスファイト!」

座り込むわたしに手を差し伸べるランキ。
しっかり手を握って立ち上がる。
メダロッターとして誇らしいロボトルだった。

「いいロボトルでした。でも、それとこれとは話が別です」

「お!?」

戻ってきた警備員に取り押さえられるランキ。
そのうちのひとりがのしかかりながら状況を報告してくれた。

「浸水は大部分が収まりました。ただ、地上へ通じる隔壁の件ですが。
操作パネルに水が入り込んで回線がショートしてしまったようです。
手動で開けるしても何層にも渡って閉じているため・・・」

説明を手で制止して考える。
浸水が止まったのはあくまで地下のみ。
隔壁をこじ開けたとしても,濁流とそれに乗じて物が流れ込んてくる。
それらを防ぐ、あるいは破壊する手段が必要だった。
わたしはランキの横に落ちている巨大なドリルに目をつける。

「まさか・・・」

目線を追う警備員の方。
わたしは床に押さえつけられている大男と視線を合わせる。

「わたしたちに協力してください」

ランキはニターっと嬉しそうに口元を動かした。

 

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