地下2Fを進むランキとメダロットたち。
部屋は錠が閉められた後のようで開いている扉はひとつもない。
十字路の廊下には隔壁が降りていなかった。
代わりにダンボール、机、ゴミ箱の山がそびえ立つ。

「突破!」

ランキと共にメダロットが障害物を取り払い始める。
量が多いものの突破されるのは時間の問題だとわたしもわかっていた。
ここを抜ければ次は地下1F。
研究員たちの元に辿り着けば騒ぎは大きくなるに違いない。

バシャーーーーーーーーー

「わっ。な、なんなの?」

唐突に天井から冷水のシャワーが降ってきた。
離れていてよく見えないけれど、ランキたちの上からも降っているよう。
スプリンクラーの誤作動?こんな時に!
わたしは使い物にならないメガネをしまいながら内線を手に取った。


地下1F倉庫前。
再び集まった研究員と警備員は深刻な面持ちで話していた。

「侵入者を地上に出せば事態は更に悪くなるでしょう。
皆さん、メダロットは行き渡りましたね?
メダロッチがない分、指示は出しにくいでしょうが・・・。
この期に及んで四の五の言っていられません。
われわれの手で、凶悪犯を止めるのです!」

「オオーッ!」

手を突き上げる総員。そしてメダロットたち。
そこに数人の警備員と研究員が地上側の階段からなだれ込んできた。

「いっ、1Fから浸水!止めきれません!」

「風が強くて、私たちだけじゃ・・・」

「何ですって!?しかし侵入者が・・・」

ルルルルル ルルルルル

備え付けの内線が鳴る。
頭を抱えながら警備員のひとりが受話器を持った。

「ミジュウです!地下2Fのスプリンクラーが誤作動して水浸しです。
警備員の方が止めようとしてますが人手が足りません。
すぐにどなたか来て下さい!」

ガチャ

全員が黙り込む。降りてきた研究員が神妙に言った。

「地上と地下を結ぶ階段はひとつだけ。
現在、非常用の厚い隔壁が作動して地下への浸水を防いでいます。
先に地下2Fを対処しないと・・・」

「だが・・・。地下へ行くには侵入者と鉢合わせすることになる。
モニターの様子だと、すんなり通してくれるようには到底思えない」

答える警備員。

ドン

もうひとりの警備員が壁を叩く。

「やるしかないだろ!もう迷ってる時間はないぞ!」

「そうですね・・・。侵入者を突破し、浸水を防ぎましょう!」

決意を固め、15人と15体のメダロットは準備を整えた。


光が消え、再度点く。
脚立の上にいた警備員が危なげに揺れた。

「停電?非常用電源に切り替わった・・・」

「博士、ここはわれわれに任せてもう一度、応援を呼んで下さい。
このまま浸水し続けたら大変なことになる。
内線が使えなくなった以上、直接行ってもらうことになりますが・・・」

水に濡れた受話器がぶらんと垂れ下がっている。
わたしはそれを見て頷き、走り始めた。

バシャバシャバシャ

地下3Fの大穴からもまた浸水し始めるかもしれない。
もう一刻の猶予もない。ランキを止めて、応援を呼ばないと!

 

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