「ちぇいやー!」
大きな右腕で殴りかかるタラバクラバたち。
廊下の横幅はあまり広くない。メダロットも動きを制限されてしまう。
しかし小型軽量化したタラバクラバは難なく3体で突撃した。
バキキキッ
標的にされたウタゲズキーは右腕パーツで半透明の壁を発生させる。
一斉攻撃を受け止められたタラバクラバ。
壁に弾かれて小さく後ろに後退した。
「タラバクラバ、ひるむな!追撃!」
警備員の指示で再度、ハンマー攻撃がウタゲズキーを襲う。
今度は攻撃が当たる前に左腕から霧のようなものが噴射された。
ブシュー バキン
『右腕パーツ、ダメージ79%』
「前が見えないー!」
「バ、バカこっちくるなー!」
目つぶし状態になったタラバクラバが反転して右腕を振り回した。
仲間を攻撃し始めるのを確認した試験機2体が顔を見合わせて頷く。
「ワシらはこっちじゃ。ほれほれ!」
ポン ポポポン
『右腕パーツ、ダメージ99%。機能停止』
『左腕パーツ、ダメージ24%』
『右腕パーツ、ダメージ16%。左腕パーツ、ダメージ25%』
ミカンとトマト型の特殊弾を撃つイロイガンナー。
オドロモンスが左腕の疑似脚部で壁を歩いていく。
「うわ!なんだあれ!?」
壁をガツンガツン叩くタラバクラバ。
オドロモンスは紙のようなものを撒きながら反対側に渡った。
「わっぷ。このぉー!」
『左腕パーツ、ダメージ99%。機能停止』
『右腕パーツ、ダメージ99%。機能停止。脚部パーツ、ダメージ99%。機能停止』
「お。やっと見える」
「お前はそっちの撃ってるほうと戦ってろ、バカー!」
仲間割れが収まり置き去りにされる先頭のタラバクラバ。
残る2体が廊下に降りたオドロモンスに向かって突き進む。
ポム
「食らえー!」
ボン ズルッ
『頭部パーツ、ダメージ20%』
「いたー!」
「どうした!?」
突撃したタラバクラバのうち1体がすっころぶ。
思わずもう1体が振り返るとイロイガンナーが銃口を向けていた。
機能停止した先頭のタラバクラバ。
彼が倒れたと同時に雨あられと特殊弾が発射される。
ポポポポンポポポポポン
『頭部パーツ、ダメージ99%。機能停止』
『頭部パーツ、ダメージ11%、28%、43%、50%』
「いでででっ!やめろー!」
正確に頭部パーツへ向けて跳ね返る弾丸。
たまらずたじろいだ最後のタラバクラバの背後にはオドロモンスが。
「ケケケケケ」
逆さまの頭部で不気味に笑いかけ、人魂のような弾を発射した。
ボワン ズルッ
「ま、また・・・」
足元をすくわれたものの、両腕をついてなんとか頭は打たなかったよう。
「危ない危ない。ケケケケ」
壁を渡り最初の位置に戻るオドロモンス。
イロイガンナーと共にウタゲズキーの後ろへ避難している。
ウタゲズキーはといえば頭部が元の形と違っていた。
特殊機能の変化パーツを使用したらしい。あの形は。
「サムライブラスト!?」
ビーーーーッ
『頭部パーツ、ダメージ99%。機能停止』
チャリン
「やったぜぇ!」
「次次。早く。ケケケ」
地下2Fに続く階段を上っていくランキたち。
思わず小声を出してしまったけれど気づかれてない様子。
ホッと胸をなでおろして立ち上がった。
ルルルルル ルルルルル
不意に鳴った内線に冷や汗を流しながら受話器を取る。
もう少し早かったら気づかれていたかもしれない。
「・・・ミジュウです」
「博士、大変です!またそちらで浸水が始まりました!」
「塞ぎ切れてなかったみたいですね・・・。すぐに戻ります」
「地下3Fに残っていた警備員が2名、既に向かっています。
博士は機器が水に浸からないよう扉を厳重に閉めて回って下さい」
「はい。侵入者のほうはお願いします」
ガチャ
止まらない浸水。そして侵入者、ランキ。
また、胸騒ぎがした。今夜は問題が起こりっぱなし。
このままじゃいけない。わたしも、できることをしなければ。
重要な機器類もある。警備員の方に話して上へ持っていかないと・・・。
監視室に並んだ小型モニター。
左下隅にミジュウ博士が走る様子が映し出される。
その横で、窓ガラスが割れる映像が流れていた。