昼下がり。木陰で寝転がる。
葉っぱの影がボディに映ってさわさわと揺れた。
木の上を鳥たちが通り過ぎる。静かだ。
こんな日は昼寝に限る。腕を伸ばして大の字。
両腕の上をアリが通った。
土もオレも、アリからすれば大して変わらないらしい。
空が青い・・・。

「・・・であります」

西から声が聞こえる。人間の声。
町の方角だ。もめ事か?

ガシャーン

続いて大きな物音。かなりうるさい。誰だ。
オレは飛び起きて斜面を下っていった。


ガシャーン ガシャーン ガシャーン

「ナチュラリーふんばるであります!」

「隊長どの!体が痛いであります!」

「ひるまず続けるであります!」

セレクト隊の人間とメダロットがゴミ山に体当たりしている。
いったい何がしたいのか・・・。
とにかく、このままうるさくされてはかなわない。
オレは山の上にあるスイッチを押した。

カチッ

ドドドドドドドドドドドドドドド

「痛いであります!」

「やめるであります!」

「隊長どの、いたであります!」

仕込んである射撃パーツで攻撃してやった。
だが今日のヤツらは攻撃してもその場から逃げない。
おまけに、オレを指差したヤツの近くに見慣れないメダロットがいる。

「隊長どの。彼がターゲットですね」

「そうであります!やい野良メダロット。降りてくるであります!」

バイザーをかぶった人間の横にいるのは騎士型のメダロットに見えた。
こいつもセレクト隊だろう。頭のバイザーが真っ白い。

カチッ

オレは容赦なくスイッチを押した。

キン

ガガガガガガガガガガガガガガガ

押した途端に仕込みパーツがすべて破壊された。
騎士型メダロットが構えを解いてこっちに向けて叫ぶ。

「私と戦いなさい!野良メダロット!」

あいつがやったのか。オレは備え付けのロープを木から外して叫び返す。

「登ってこい!」

ロープに手をかけて登ってくる騎士メダロット。
騎士メダロットが登り切ったことを確認してから続いて登るセレクト隊を振り払う。
尻餅をついて痛がっている。油断も隙もあったもんじゃない。
オレは騎士メダロットに合図して山道へと降りた。


「オレをどうしたいんだ。捕まえるのか?」

まず訊いた。いつものことだが、セレクト隊は何を考えているのかわからない。
騎士メダロットは持っている槍を突きつけながら言った。

「セレクト隊はあなた決闘を申し込みます。私が勝ったら山から出ていきなさい」

決闘。つまり戦いたいと言っているのか。
セレクト隊は戦いで白黒つけようというわけだ。
オレは槍をどかして話を返す。

「お前が負けたら?」

「その時は潔く全員で撤退します」

わかりやすいことだ。追い返してもいいが、またうるさくされるのはかなわない。
オレはこの『決闘』というものに付き合うことにした。

ビュン

ツメが空を斬る。
見た目より素早い。槍が目の前に突き出てきた。

ヒュヒュヒュ

何度も攻撃してくる。オレはかわしながら隙をうかがった。
速い攻撃だがマックスネイクよりは少し遅い。

ガッ

左のツメで槍をどけて右のツメで斬りかかる。
頭パーツがガラ空きだ。
ツメが頭に届く直前に頭パーツが光る。

キン

『右腕パーツ、ダメージ30%』
右のツメが逆に動いた。
さっき見た光だ。こいつ、簡単には倒せないな。
槍がオレを突き飛ばした。
『頭パーツ、ダメージ20%。機能一時停止』
動けない。着地もできずオレは地面を大きく滑る。

ザザザザザ

動けないまま仰向けに横たわる。
真上から槍を逆に持った騎士メダロットが落ちてきた。
動かない体。騎士メダロットの槍が空気を切り裂く。
落ちてくる体。動きが全てゆっくりに見えた。
槍がオレの肩に届く。
『再起動終了』

ガシュッ

『右腕パーツ、ダメージ62%。機能一時停止』
『脚部パーツ、ダメージ7%。右間接部に異常発生』
再び体が動かなくなる。
騎士メダロットは蹴飛ばされて地面に転がった。

「足が・・・」

右ひざをついて槍を地面に立てる騎士メダロット。
『再起動終了』
オレは一足先に起き上がった。今度はこっちの番だ。

ガガガッガガガガッ

『右腕パーツ、ダメージ80%』
右腕に持つ盾でツメの攻撃をすべて受け止められている。
あの光は使ってこない。いつでも使えるわけじゃないのか?
『脚部正常化』

ビュン

『左腕パーツ、ダメージ39%』
立ち上がった騎士メダロットが反撃してくる。
槍の反対側で突き飛ばされたオレは騎士メダロットと向かい合った。

「やりますね・・・」

「セレクト隊に骨のあるヤツがいたなんてな」

「我が隊への侮辱は許しません!」

「ならあのヘナチョコどもを鍛え直してこい!」

ガッ キン

『左腕パーツ、ダメージ99%。機能停止』
ツメの攻撃は弾き返され、盾を構えた騎士メダロットはオレを突き飛ばす。
すかさず槍の鋭い攻撃。これが最後のチャンスだ。

「トドメ!」

ズババッ

『右腕パーツ、ダメージ99%。頭部パーツ、ダメージ40%』
踏ん張って右のツメを振り回す。
槍がツメに当たってそれた。オレは思い切り斜め上に向かって振り斬る。

「おおおおおっ!!!」

ザシュッ!

『頭部パーツ、ダメージ99%。機能停止』

チャリン

白いバイザーを三本爪が切り裂いた。

 

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