「エイム撃て!」

ガチャッ

右腕のライフルを構えるエイムシザース。

「マーブルハンター。防御しろ」

少年がすぐに指示を出す。

ジャケットを脱いだまだら模様のメダロットは防御の態勢をとった。

「ヒダリブトンだ」

バサッ

『左腕パーツ、機能停止』

ジロウとアンミッパーだ。すかさずおれとサキジが攻撃を合わせる。

「ハモンスナイプ発射!」

「Bロケットほう発射!」

バンバンバンッ

ゴーッ

とっさに横に飛んで回避するまだらメダロット。

狙いが外れたロケット攻撃が地面に当たって土を巻き上げる。

『脚部パーツ、ダメージ0%』

「効いてない!?」

攻撃の威力が低いとはいえ、あれだけ当たっても完全に無傷だ。

「マーブルハンターの脚部は特別製。そんな弾、いくら当てても無駄だぜ」

「おれがやる!」

ゴーッ

ランチャービートが右腕パーツを撃ち出す。

またしても回避したまだらメダロットは頭から出てきたのはミサイル。

ドドドッ

3発のミサイルがおれたちのメダロット全員に降ってきた。

『頭部パーツ、ダメージ60%』

『左腕パーツ、ダメージ80%。発射口損傷。使用不可能』

『右腕パーツ、ダメージ99%。機能停止。左腕パーツ、ダメージ40%』

「全員に攻撃だって・・・」

メダロットの射撃システムは1体に狙いをつけるのがやっとのはず。

まだらメダロットはそれを3体同時に攻撃してみせた。

ひるむおれたち。そんな中サキジが、キッと少年をにらみつけて指示を出す。

「ランチャービート、頭パーツで反撃だ!」

ドゴーッ

速度の速いロケット攻撃がまだらメダロットに直撃した。

『脚部パーツ、ダメージ16%』

「やっとマシな攻撃をしてきたか」

楽しそうにニヤつく少年。

ランチャービートの強力な攻撃が簡単に受け止められるなんて。

「ランチャービートを援護だ!」

バンバンバンバンバン

エイムシザースが撃ちまくる。

何発もの弾丸が羽根を開いて突撃した。

ガガガガガッ

『右腕パーツ、ダメージ2%。左腕パーツ、ダメージ3%』

当たりはするもののほとんど効いてない。

少年はつまらなそうに構えを解いたまだらメダロットを見る。

「やれ」

ウィィィン

右腕を振り上げた。何をするつもりだ?

突然、サキジが大声で叫んだ。

「ランチャービート!早く撃て!」

「サ・・・」

ズシャアアアアアアアアアアアアアアアアアア

ズバン!

「あああああああああ!!!!!」

飛んできた何かがエイムシザースの右手を吹き飛ばした。

いや、斬ったのか?おれの目に剥き出しになったティンペットが映る。

エイムシザースが声を上げたのがわかった。

ビーッビーッビーッ

『右腕が損傷しました。ロボトルを中止し、すぐに修理の・・・』

メダロッチが聞いたことがないエラーメッセージを読み上げている。

なんだ。何が起きたんだ。今の攻撃は・・・。

「メダフォースだ」

「なんだよ、ぞれ」

サキジが冷や汗を流しながら呟く。

おれは言葉の意味がわからずに聞き返した。

「うわさで聞いたことがある。メダロット最大の攻撃技らしい。

でも使えるのは限られた、世界でもトップレベルのメダロットだけのはず」

「ククク」

パラパラ

少年がまだらメダロットの背中を開ける。

メダルのかけらが地面にこぼれ落ちるのが見えた。

チェーンでまとまったメダルの束から1枚を取り出してセットしている。

「このパーツは強いが使うとメダルが壊れちまうのがメンドクセー」

「こいつ!」

おれは少年の腕を掴んだ。

「おまえ、やってることわかってんのか!?

メダロットを、友達を何だと思ってんだ!」

「離せよ」

ドサッ

「ぐっ!」

なぐられて投げられた。痛い。口の中で血の味がした。

「このやろ!」

サキジが走り出すが、まだらメダロットが動き出して行く手をさえぎった。

「俺とお前たち、やってること同じだろ」

「なんだと!一緒にするな!」

「同じだぜ」

まだらメダロットに通せんぼされたサキジを無視して少年が話し続けている。

「コンビニで買えるのが友達?飽きたら捨てたり売れるのが友達だと?笑わせるな」

右腕を上げるまだらメダロット。サキジが慌てて後ろにさがる。

「メダロットはただの機械だ。お前たちは命令に逆らえない物を友達扱いしてるだけなのさ」

少年が笑いながらおれたちに言い放つ。

「おまえ・・・」

ズシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

言いかけたサキジの言葉がかき消された。

『頭部パーツが損傷しました。本体機能を強制停止します』

チャリン ガシャン

すぐ後に頭パーツが破壊されたランチャービートが倒れる。

「ランチャービート!」

「メダルに傷はないぞ」

すぐにメダロッチにメダルをセットするサキジ。

無事らしいランチャービートの声を聞いて安心したみたいだ。

まだら模様のメダロットはといえば、右腕がだらしなくぶら下がっていた。

『右腕パーツ、ダメージ99%。機能停止』

「チッ最後にやりやがったな。だがまぁ、残るはザコだけだ」

舌打ちしてエイムシザースとアンミッパーを見る少年。

言いたいことが山ほどあるが口に出せない。

あいつが言うことにも思い当たるものがあったからだ。

おれはエイムシザースを、勝手に友達と呼んでるだけじゃないのか?

「あいつが言ったこと、どう思う?」

「マスター、あなたたちがオレたちのことをどう見ていても構わない」

エイムシザースが背を向けたまま話し始める。

おれはうつむきながら聞いていた。

「オレたちメダロットはまずパートナーになる人間を最初に見るようになってる。

それは機械だからなのかもしれない。

それでも、それからどうするかは自分自身の意思で決めている。

オレはソラノスケの指示で戦いたいから今もロボトルしてるんだよ」

「エイム・・・うん!」

メダロッチを構えて戦う準備をする。

「私も同じ気持ちです。ジロウ」

「サキジ、言わなくてもわかっているな」

ジロウとサキジも同じ思いをメダロットたちから打ち明けられていた。

もう迷うことなんかない。

それにあいつの言葉が何か引っかかった。

おれはそれを口に出して言う。

「おまえメダロットをただの機械だって言うけど、それは何だよ」

投げ捨てられたジャケットを指差す。

ロボトルが始まるまでまだらメダロットが着ていたものだ。

少年も同じものを着ている。

「これは・・・」

「それ、お揃いだろ。本当はおまえが身につけてるチェーンもつけたいんじゃないのか?」

ジャラジャラ

少年が腕を動かすと体じゅうにつけている鎖が音を立てた。図星だったらしい。

「だからどうした。何が言いたい!?」

「もしかしておまえもメダロットと友達になりたいんじゃない?」

「ち、違う!お前らみたいな弱いメダロットと一緒にするな!」

様子が変わる少年。こいつも、おれたちと同じなのかもしれない。

やり方が間違ってるだけで、本当は・・・。

「弱いかどうか、確かめさせてやる!」

「ロボトルはまだ終わってないよ」

ジロウが珍しくやる気をぶつけた。

 

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