おれたちは葉っぱがわんさかしげっている木々の間に立ち止まる。

大きくて高い木が2本、電子看板を守るように生えている。

おれが『密林』と書かれた明るい文字を見上げて両手を挙げた。

「一周したぞーーーー!!!」

「いやぁ長かった」

どっこいしょと言いながらしゃがむサキジ。ジイさんか。

横ではアンミッパーに乗ったジロウが目をこすってる。

「いま何時?」

「13時すぎです」

アンミッパーが答える。思ってたより早く回れた。

背すじを伸ばしてから戦ったメダロッターを指折り数える。

「セイさんとノトリーさんとノウコさんとエボシさん・・・」

「おれとジロウも忘れんなよ」

「合計で・・・6人?」

受付のお姉さんによると参加者は8人だったはず。

おれを入れても7人。1人足りない。

「途中で帰ったのかもな。エボシ先輩みたいに」

サキジが言う。ところどころに非常口があるのはおれも見て知っていた。

全員と戦えなかったのは残念だけど、たくさんロボトルができた。

「そろそろ帰ろうか。ジロウたちはどうする?」

「ぼくも帰ろうかな」

ジロウが喋った。アンミッパーから降りて水のようなものを飲んでいる。

「じゃあみんなで・・・」

ジャラ

「何だ?」

サキジが言う。おれにはよく聞こえなかった。

「何だって、何が?」

ジャラ ジャラ

「音だよ。聞こえるだろ?」

耳に手を当てる。そう言われれば、何か聞こえるような・・・。

ジャラジャラ ジャラジャラ

「チェーン?」

「いや、それだけじゃないみたいだぜ」

ザッ

「ンー!」

「こんな所に固まってやがったか」

声がして後ろを振り返った。

身動きが取れなくなったレフェリーの人がメダロットに捕まっている。

見たことないやつだ。変な色のジャケットを着ている。

おそろいのジャケットを着ているのがメダロッターか。

「レフェリーの人!」

「おい、おまえ何してんだよ!その人が誰だかわかってんのか?」

サキジが食ってかかる。大人にあんなひどいことをするなんて。なんてやつだ。

「知るかよ。俺のロボトルにケチつけたから悪いんだ」

低い声で合図する少年。おれたちよりずっと年上だ。

中学生か、高校生くらいに見える。それよりも。

「まさか、おまえが8人目の参加者?」

ここは貸し切りのはずだ。誰かが入ってくるなんて考えられない。

なら、最初から入り込んでたってことになる。

「参加者?ああ、来るまでに何人か倒してやったよ」

会話がかみ合ってない。それでも言ってる意味はわかった。

おれたちの後から来たってことは、他のメダロッターと会ったのか。

「セイさんたちにも手を出したのか!?」

おれは声を大きくする。レフェリーの人みたいにひどいことを?

少年は笑いながら答えた。

「ククク。弱っちい奴らだった。ティンペットごとボロボロにしてやったよ」

「な、何だって?」

メダロットにはセーフティ機能がついている。いわゆる安全装置だ。

それが外れない限りパーツ以外は傷つけられないようになっているのに。

「違法メダルを使いやがったな」

「ククク・・・」

サキジの言葉を聞いて少年が笑う。

「違法メダル?」

おれは言った。

歯ぎしりしながらサキジが答える。

「戦うために作られたメダルだ。

はめ込んだら最後、メダロットがバラバラになるまで攻撃する。

もちろん、メダロット社が売ってるメダルじゃない。

ロボトルじゃ絶対に使っちゃいけないルールだ。それにあのパーツ」

兵隊みたいなカラーリングのメダロットを指差して話を続ける。

「あれは全部、違法パーツだ。あんな型のメダロットは作られてない。

さしずめあいつは違法メダロッターだな」

「むずかしい言葉ばかりでよくわかんねーけど・・・」

レフェリーの人を見る。助けてくれって目が言っている気がした。

おれはメダロッチを構えた。

「ここまでしてるやつを知らんぷりなんかできないだろ!」

「わかってら!」

「ぼくも戦うよ」

サキジとジロウがメダロッチを構える。

ジジジジッ

ランチャービートが土の上にズシンと現れた。

3本の鎖でかざられたジャケットからメダロッチを出す少年。

「まとめてかかってこいよ」

前に出てくるメダロット。ツノが3本、頭パーツから生えてるのが見える。

「ンーンンー!」

レフェリーの人がくぐもった声で何かを叫んだ。

 

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