「ランチャービート、Bロケットほう!」
ゴーッ
サキジがすぐに先制攻撃する。相手を分断する狙いもあったんだろう。
しかし羊型2体は攻撃を回避するとアンミッパーに攻撃を始めた。
「ポップシープ!俺たちの音楽を聴かせてやれ!」
「ファンシープ!私たちの弾丸を撃ち込んで!」
キィィィーン
ガガガガガッ
『脚部パーツ、ダメージ46%。異常発生。移動力低下中・・・』
隙のない連続攻撃がアンミッパーを襲った。
音波攻撃とマシンガン攻撃だ。
すぐにエイムシザースが立ちはだかり援護に回る。
「エイム。アンミッパーを守れ!」
「了解、マスター」
バンバン
『右腕パーツ、ダメージ7%』
リーダー機に牽制弾を撃つ。
大したダメージにはならないが注意をこちらに向けたい。
バンバンバン
バシューッ
『左腕パーツ、ダメージ11%』
「すばしっこいな。どっちとも」
サキジがおれに合わせて攻撃する。しかしまた回避される。
エイムシザースとランチャービートはアンミッパーの左右を守っている。
羊型は3体の回りをぐるぐる回りながら連続攻撃をしかけてきた。
ガガガガガッ バンッ
キィィィィーン
『右腕パーツ、ダメージ21%。左腕パーツ、ダメージ16%。命中力率低下中・・・』
『頭部パーツ、ダメージ19%。右腕パーツ、ダメージ27%。攻撃速度低下中・・・』
『脚部パーツ、ダメージ80%。左腕パーツ、ダメージ12%。移動力低下中・・・』
「このままじゃなぶり殺しだ!」
「わかってる!」
「援護する余裕がないです・・・」
ボコボコにされるおれたち。このままじゃらちが空かない。
そんな時、サキジとランチャービートが動いた。
「ランチャービート、頭パーツだ!」
ピッピッピッピッ
そうか、索敵パーツ!
ダンバーテンの頭部パーツの能力で、チーム全体の命中力が強化された。
今なら攻撃が当たる!
「リーダーに攻撃だ!」
ガキンッ
ゴーッ ボカン
『右腕パーツ、ダメージ99%。機能停止。頭部パーツ、ダメージ35%』
「やったぜ!」
リーダー機の片腕を機能停止させるサキジ。
おれとエイムシザースはといえば、音波攻撃で攻撃がノロくなっていた。
今しがたやっとはさみを開いたところだ。
「くそぉ。ノロい・・・」
「ハヤノスケは見てな!おれが倒すぜ!」
ゴゴーッ
連続で攻撃するランチャービート。だが。
「私のファンシープはまだ速くなるよ!」
「そうとも!逆転なんてさせないさ!」
ガンマンのほうの羊型がさらに素早くなり、ランチャービートの攻撃を回避する。
反撃の猛攻撃が再びおれたちへと飛んできた。
ガガガガガガッ バンッ
キィィィィィィーン
『右腕パーツ、ダメージ66%。左腕パーツ、ダメージ99%。機能停止。命中率低下中・・・』
『頭部パーツ、ダメージ70%。右腕パーツ、ダメージ99%。機能停止。攻撃速度低下中・・・』
『脚部パーツ、ダメージ99%。機能停止。左腕パーツ、ダメージ99%。機能停止。移動力低下中・・・』
次々にパーツが破壊されていく。こうなったら・・・。
「エイム!頭部パーツを・・・」
「ダメだ!」
ヤナギコムを使おうとするおれを止めるサキジ。
おれはハッとして頭部パーツを初めて使ったロボトルを思い出す。
「そうか。おれが使えば・・・」
「わかってるよな?ランチャービートが攻撃できなくなるって」
射撃パーツを使えなくすれば相手から受ける攻撃は半減する。
しかし、強力な攻撃ができるランチャービートがいなきゃおれたちの分が悪くなる。
サキジって、こんなに頭の回転が速かったっけ?
「ごめん。おれ、おまえのこと甘く見てた」
「んなこと言ってるバアイか!?気持ち悪い!」
サキジが羊型をにらむ。そうだ、これはチームロボトル。
チームが勝つためにはどうすればいいか。おれは少ない頭をふりしぼって考える。
このまま攻撃され続けたら次こそアンミッパーが機能停止してしまう。
そうなったらおれたちの負けだ。なら、どうすればいいか。
エイムシザースたちで守る・・・ダメだ。もう、他の2体もダメージが限界だ。
いちかばちかリーダーにキリサキバサミで攻撃・・・これもダメだ。
当たったとしても機能停止させるまでには時間がかかる。
攻撃している間にアンミッパーがやられたらおしまい。となると残るのは・・・。
「サキジ、タイミング合わせて撃ってくれ!」
「おまえに合わせろだぁ!?」
「これが最後のチャンスなんだ!」
攻撃が飛び交う中でサキジと目が合う。
1秒あるかどうかの短い時間。それで十分だった。
「合図したらアンミッパーも!」
「何をゴチャゴチャ言っているんだ!」
「何をゴチャゴチャ言っているの!?」
シープランド兄妹が笑いながら言う。どうやら、トドメを刺すつもりらしい。
おれは思い出す。セイさんとのロボトルを。
あの時、セイさんの攻撃が当たったのは・・・。
「トドメだ!ポップシープ!」
「トドメよ!ファンシープ!」
羊型たちの狙いすました攻撃が発射されようとしていた。
足を止めた一瞬。おれたちはそれを見逃さなかった。
ガチッ
ガンマンの羊型にエイムシザースが食らいつく。
『頭部パーツ、ダメージ10%、19%。27%。なおも上昇中』
「兄さん!ファンシープが!」
「隙をついてきたな!ポップシープ!」
2体がエイムシザースに狙いを変え、攻撃を発射する。
この攻撃で倒せるとは思っていない。
「撃て!」
「撃て!」
初めてあの兄妹の息がズレた。
かわりに、おれとタイミングがぴったりの合図をする。
バンッ キィィィィーン
『頭部パーツ、ダメージ99%。機能停止』
チャリン
「上出来だぜ、ハヤノスケ!」
ポーン
「なにー!?」
「えーっ!?」
驚く兄。驚く妹。
まず先に攻撃したのはアンミッパーだった。リーダーへと攻撃が命中する。
『左腕パーツ、機能停止』
ゴーッ ボカン
続いて、サキジとランチャービートのロケット攻撃が無防備な頭部パーツに命中した。
「頭部パーツ、ダメージ99%。機能停止」
チャリン
この短い間にエイムシザースとポップシープが次々に機能停止した。
おれたちのリーダーはアンミッパーだが、相手のリーダーはポップシープだ。
レフェリーの人は手を挙げて叫ぶ。
「リーダー機能停止。アンミッパーチームの勝利です!」
「やったああああーーー!!!」
「そんなぁー」
「そんなぁー」
喜ぶおれたち。悲しむふたり。
戦利品として渡された格闘パーツを見ながら、おれはオデコの汗をぬぐった。