森の中を歩いていくと木が生えていない場所に到着した。

立っている電子看板に『広場』と書いてある。

「やっと木のない場所に出れた・・・」

おれとサキジ、アンミッパーに引きずられているジロウは足を止めた。

「おっ、あれ見ろよ」

「水飲み場だ!」

サキジの指差した先に8つの給水所が見える。

疲れてきたおれたちはがぶ飲みしようと全速力で走った。

「マスター、お水ですよ」

「んー・・・」

ジロウも起きたようだ。のろのろとこっちに歩いてきてる。

ドンッ

「うわっ」

「いてぇ。急に止まるな!」

誰かにぶつかってドミノ倒しになるおれとサキジ。

「おじさん、誰?」

先に立ち上がったサキジが見上げて言った。

黒いヒゲを生やした大人がふたり。いや、片方はメダロットだ。

「俺は八津頭誓(ヤツガシラセイ)だ。口付けて飲むなよ、公共施設なんだから」

水の入ったコップを3つ差し出しながらおじさんは自己紹介を始めた。

この町で小さなお店を経営しているらしい。

大人のお店だとかで、おれたちは行ったことがない店だ。

「おれはハヤノスケです。こっちはサキジ」

「ずっと寝てるのがジロウっす」

「よろしくな。サバイバルドームは初めてかい?」

「ハヤノスケは初めてで。しかも買ったばかりのメダロットで参加してます」

ヤツガシラさんは笑いながらコップを回収した。

「ははは。そりゃ豪気だな。どれ、おじさんが簡単に説明してやろう」

落ちている木の枝で丸い円を描くヤツガラシさん。

次にしゃがんで縦と横に線を引いた。

左下にバツ印を描いてとんとん、とつつく。

「ここが現在地。まあ『広場エリア』ってとこかな。

道をまっすぐ行くと左上の『草原エリア』にたどり着く。

その次は泥だらけの『湿地エリア』だ。

さらに進むと最後に『密林エリア』に戻ってくる。お前たちが歩いてきたエリアだな。

各エリアは一本道で繋がっていて、時計回りでしか移動できないようになっているんだ

わかったか?」

説明が終わると木の枝を捨てて立ち上がった。

おれはうんうんと頷いた。ようは一本道で戻れないってことかな。

「ありがとうございます!よくわかりました」

「結構結構。他に訊きたいことがあれば何でも言ってくれ」

そう言うとヤツガラシさんはどこからともなく出したイスに座って雑誌を見始める。

一体どこから・・・。

それも気になったけど、先に知りたいことがあった。

「ヤツガラシさんはよく来るんですか?」

「サバイバルドームか?よく来るよ。俺はロボトルを見るのが趣味でね」

「だからこんなに詳しいんですね」

サキジがうんうんと首を振った。

隣でジロウがぐうぐうといびきをかいている。

おれはもうひとつ訊きたいことがあった。

「ヤツガラシさんは・・・」

「セイでいいよ。で、何かな?」

ぺらりとページをめくりながらセイさんが言う。

「はい。セイさんもロボトルするんですよね?」

「するよ。君たち、もしかして俺とロボトルしたいのか?」

「したいです、ロボトル!」

おれとサキジは同時に言った。

大人とロボトルするチャンスなんてそうそうない。

するとセイさんはイスから立ち上がった。

「いいとも!ただ1体じゃ相手になってあげられないから、もう1体呼ばせてもらうよ。

そのかわり、君たちは3人でかかってきていい」

「えっ!1人で2体も使えるんですか?」

サキジがひじでおれをつっついた。

「そこまで珍しくないだろ。って、おまえは見るの初めてか」

「ああ、そうだよ!」

サキジの言う通りだ。おれは1人は1体しかメダロットを持てないと思っていた。

2体以上のメダロットを操るメダロッターを見るのはこれが初めてだ。

「そうかそうか。それじゃあメダロット転送!」

ジジジジジ

もう1体、黒ヒゲを生やしたメダロットが目の前に現れた。

違うのは両腕で、大きめなハンマーを装備している。格闘パーツだ。

「こちらのリーダーは格闘パーツを装備してないダンバーテンだ。そっちはどうする?」

「おれがリーダーでお願いします」

おれは真っ先に名乗り出た。サキジが抗議する。

「リーダーはおれだろ!」

「おまえよりおれの方がリーダーにふさわしい!」

「何だと!」

ギャースカ騒ぐおれたち。

見るに見かねたのか、セイさんがアンミッパーを指差した。

「決まらないようだし、彼がリーダーでいいんじゃないか?」

「私ですか?」

「ハヤノスケよりはマシだな」

「えええええええええーーーっ!!!」

おれは猛抗議するが完全に無視されてしまう。

これは『ドクサイセイジ』ってやつだと思った。

「ダンバーテンチーム対アンミッパーチーム。準備はよろしいですね!?」

落ち込むおれはレフェリーの人がいるのに気づかなかった。

ほっぺたをバシッと叩いて気分を変える。

「ほら、ロボトル始まるぞ」

「わかってるって!」

「私は援護に徹しますね」

「こちらも準備が終わったよ」

各メダロッターとメダロットが向かい合った。

広場にレフェリーの人の声がとどろく。

「それではロボトルーファイト!」

 

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