青い空。白い雲。そして、子供たちの声。

ここはマゼコゼ町のケサギリ小学校。その2階。

おれたちAクラスではロボトルが大流行している。

メダロット同士を戦わせるロボトルでおれは負けたことがない。

「ハヤノスケ、授業終わったしロボトルしよーぜ!」

「またかよー!人気者はまいるね」

「調子乗んな、バァーカ」

「はぁー!?バカって言う方がバカ!」

「バカバカ言うな、バカがうつる」

「バカにすんなコノヤロ」

「いててて」

おれは空野隼之介(ソラノハヤノスケ)だ。

バカバカうるさいこいつは友達の波根田左雉(ハネタサキジ)。

4年生の今までずっと同じクラスの幼馴染み。

こいつに言われてロボトルを始めてもう1年以上たつ。

連戦連勝のおれはこいつの言う通り、調子に乗っていた。

だからこそ誕生日プレゼントに格闘型の新モデルを買ってもらったんだ。

「まだ発売したばっかなんだぜ、いいだろ」

「おれがやった誕生日プレゼント持ってるだろーな?」

ランドセルを背負って通学路を帰る。

いつも思うけどこの町、店と道多すぎ!

迷路のように入り組んでるせいで家に帰るのも一苦労だ。

「メダルだろ?カニメダル」

「そうそう、おまえが格闘メダロット買うって言うからさぁー」

「ありがとありがとありがと。そんじゃロボトルすっか」

「心がこもってないけど、まぁいっか。メダロット転送!」

ジジジジッ

おれたちが腕に巻いているメダロッチがピカッと光った。

道路に現れたのは2体のメダロット。

1体はKWG型をモトに開発されたおれの新しいパートナー、エイムシザース。

もう1体はサキジのLAU型車両メダロット、ランチャービート。

「いつもの射撃メダロットじゃなくていいんだよな?」

「いいぜー!格闘タイプもそう変わんないだろ」

カチン

カニメダルをはめ込んで準備完了だ。それじゃ・・・。

「合意と見てよろしいですね!?」

「わっ!いつもの人かぁ」

ロボトルをしようとするといきなり現れるおじさんだ。

レフェリーという人らしい。つまり審判だ。

「それではロボトルーファイト!」

「ランチャービート、Bロケットほう!」

ドーッ ボゴム

『左腕パーツ、ダメージ60%』

起動したばかりのエイムシザースに攻撃するランチャービート。

「不意打ちかよっ!」

「へへーん。悔しかったら攻撃してみなー」

あかんべえをしているサキジ。こ、こいつ・・・。

「反撃だエイムシザース!」

「起きたばかりなんだけど・・・。りょーかい」

文句を言いながらも指示に従ってくれるメダロット。

素直なやつじゃないか。これなら問題なく戦えそうだ。

「撃て、エイムシザース!」

バンッ

エイムシザースの右腕から特殊ライフルが発射される。

弾丸は途中で羽根を開き加速していく。

ランチャービートは腕パーツで防御した。

『右腕パーツ、ダメージ9%』

「あれっ弱くないかこれ」

「おいおい、説明書よく読んだのかぁ?」

サキジに言われて思い出す。確か右腕パーツは『アンチエア』だった。

飛行メダロット以外にはいまいち効果がない攻撃だ。

エイムシザースは射撃ができる格闘メダロットだとも書いてあったっけ。

つい、いつものくせで撃てと指示してしまった。

ボカン

『脚部パーツ、ダメージ61%』

ランチャービートのロケット攻撃がエイムシザースに命中する。

なーに、まだ始まったばかりさ。

「キリサキバサミで攻撃だ!」

左腕に装備された大きくて長いハサミで殴りかかる。

スカッ

「へっ?ハズした?」

突撃したエイムシザースの攻撃は大きく外れてしまった。

「ランチャービート、反撃だ!」

ボカン ボカン

『右腕パーツ、ダメージ99%。機能停止。頭部パーツ、ダメージ30%』

攻撃がたたみかけられている。このままじゃマズイ。

確か、まだ頭部パーツを使っていなかったはず。

ここはいちかばちか・・・。

「エイムシザース、頭部パーツ使用!」

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ

V字型の角パーツからぶわっと目に見えない何かが発生した。

「ど、どうだ!?」

「どうだって言われても・・・」

サキジがランチャービートと顔を見合わせている。

何も起こらない?そんなバカな。

「ランチャービート、Cロケットほうだ!」

バシューッ

ダメだ、負ける!おれは目をつぶった。

しばらくして恐る恐る目を開ける。

エイムシザースはまだ立っていた。メダロッチを見てもダメージは増えてない。

「ハズした?」

サキジが驚いている。おれも驚いているけど。

何にしてもチャンスだ!

「今だ撃て!エイムシザース!」

バン ヒュー

右腕から発射された羽根つき弾丸はあさっての方向に飛んでいってしまった。

どういうこと?

「う、撃て撃て!撃ちまくれ!」

バンバンバンバンバン

「うわっ、おいやめろハヤノスケ!」

エイムシザースがそこらじゅうに撃ちまくる。

電柱、空、地面、家の壁、どれだけ撃っても当たらない。

「もしかして・・・」

「射撃パーツを妨害する機能・・・かもな」

ランチャービートは射撃パーツのみしか装備してないメダロット。

エイムシザースは格闘攻撃が当たらない。

つまり・・・。

「時間切れ!よってこのロボトルは引き分けです!それじゃ私はこれで!」

タッタッタッタッ

レフェリーの人は笑顔で走っていってしまった。

・・・・・・。

・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「なんじゃこりゃーーーーーーーーーー!!!!」

「うるせぇ!どこのクソガキだ!」

おれが叫ぶのと近所のオジサンが怒鳴るのはほぼ同時だった。

「ごめんなさい」

「ごめんなさい」

なぜかサキジも謝ってた。


「はーーー。さんざんだ・・・」

「それはこっちのセリフだってーの・・・」

とぼとぼと下校するおれたち。

初ロボトルがあんなことになるなんて。しかも怒られたし。

「あっ、そういえば」

サキジの頭の上で見えない何かが光ったのが見えた。

こんなときのサキジは冴えていることが多い。おれはパクリと食いついた。

「なに、何かあんの」

「そーいやおまえ、サバイバルドーム行ったことなかったよな?」

「サバイバルドーム?駅の近くにあるとこ?」

言われて思い出した。思い切りロボトルできるってうわさになってたような。

「入場料は?」

「子供は1回400円だったはずだぜ」

400円。小学生のおれにとってはちょっとばかし痛い。

でもメダロットのパーツに比べたら安いもんだ。

「よし、明日行こうぜ!」

「そうこなくっちゃ!じゃー明日9時な!」

「逃げんなよ!」

「おまえこそな!」

コブシをがつんと合わせて家に帰る。

明日が楽しみだ。それまでに説明書を見直しておかなくちゃ。


「・・・・・」

人影が電柱の傷を手でなぞる。

「・・・・・」

隣にいるメダロットに頷くと、人影はその場を後にした。

 

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