地球に帰ってからのことは、あまり覚えていない。
暴走・停止事件は被害が急激に収まっていき、たくさんの人が戦いから解放された。
多くのメダロッターが傷ついたメダロットのパーツを買い換えたらしい。
そのニュースに埋もれて事件が大きく報道されることはなかった。
そうそう、ニシンの兵器型ボディは替えがきかなかったみたいで。
ミジュウ博士が青い顔をしながら泣いたり怒ったりしていたっけ。
それから少し時間が経って、3月。最後の登校日。
僕は小学校で卒業式を迎えていた。


「卒業証書、授与」

壇上の先生に卒業証書が入った筒をひとりひとり渡される。
順番が早かった僕は席に戻って他の卒業生が証書を渡されるのを見守った。

「やっぱり家で待っててもらったほうが良かったかな・・・」

保護者席ではニシンが落ち着かない様子でキョロキョロしてる。
ニシンを学校に連れてくるのはこれが初めて。
保護者がいない僕の頼みで先生が同席を許してくれたんだ。

「グス・・・おい、何でメダロットがいるんだよ?」

隣の席にいる友達が泣きながら訊いてきた。
少しだけ恥ずかしいような、照れくさいような気持ちで僕は答える。

「僕の保護者はメダロットなんだ」

「なんだ、そりゃ」

友達が泣きながら呆れたように言った。
思えば僕はニシンに助けられっぱなしで、
ニシンのおかげで色んな人とも仲良くなることができた。
でも、これからは・・・。
少しずつ、僕自身の力で未来を切り開きたい。
この1年でそう思うようになった。

「卒業生、起立」

僕らは保護者席に向かって深く頭を下げた。


「学校って人がたくさんいるんだね」

「いつもはあれよりは少ないけど・・・」

家に帰ってニシンと話し合う。
これからも何回も何回も、同じことをするんだろう。

トゥルルル トゥルルルル

僕がテレビをつけたとき電話が鳴った。
電話口から聞こえる声を聞いた僕は思わず相手を確かめる。

「父さん・・・」

じっと見つめるニシンと目が合う。
そうだ。父さんに今度こそちゃんと話さないと。
新しい家族のことを。


テレビに映るメダロットは、片手を振って笑っていた。

 

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